2024.11.20

新規事業の成功をサポート!東急建設の低CO2建材検索システム『CMCOS(コムコス)』開発の舞台裏

【クライアントの背景】
社内の新規事業創造プログラムで、希望する低CO2建材を簡単に見つけられるシステム「CMCOS」が採択され、システム開発の初期段階からハイストーリーに相談

【リリース後の成果】
デザインの良さと使いやすさが高評価。現時点ではCO2削減への意識が高い層での支持だが、将来的には需要の拡大が見込まれる

【ハイストーリーへの評価】
ワークショップなどを通じ、ユーザー目線から良いサービスにするために一緒に考え、相談しながら進めることができた

東急建設株式会社様の新規事業である建材CO2検索システム「CMCOS(コムコス)」の開発支援事例をご紹介します。

CMCOS(コムコス)は、低CO2建材を簡単に検索・比較できるシステムです。建材メーカーが登録した最新の建材データを基に、部材ごとのCO2削減量のランキング表示、基準値によるCO2排出量の再計算、コストとのバランス確認などが可能です。また、CO2削減率や削減量での検索、評価機能も備えています。

システム開発にあたり、新規事業として立ち上げられた経緯や、実際に事業を担当されて感じたことなどについて、CMCOS(コムコス)の企画発案者である価値創造推進室イノベーション推進部 兼 建築事業本部技術統括部建築技術部の加藤晃敏氏と、価値創造推進室イノベーション推進部の重田英行氏にお話を伺いました。

東急建設株式会社 加藤晃敏氏
東急建設株式会社 加藤晃敏氏

東急建設が目指す新規事業への取り組みとは

ーー 東急建設株式会社様の事業内容と、加藤様の業務内容について教えてください。
加藤氏:東急建設株式会社は、土木事業と建築事業を中心とした建設会社です。私はその中で、本務である価値創造推進室での業務と並行して、営業や施工、設計に対する技術支援を行う建築技術部という部署にも所属しています。

今回のCMCOS(コムコス)という新規プロジェクトについては、当社には社内ベンチャー支援制度があり、今回私が提案した企画案がこの制度を通じて認証され、事業化を目指すこととなりました。

重田は社内ベンチャーを推進するイノベーション推進部に所属し、東急建設の新たな収益の柱としての新規事業の創出を担当しています。そのため、今回の新規プロジェクトも一緒に進めています。

CMCOS(コムコス)
CMCOS(コムコス)

新規事業CMCOS(コムコス)立ち上げの背景と社内体制の進化

ーー CMCOS(コムコス)を立ち上げたきっかけを教えていただけますか?
加藤氏:現在、建物を作る際には、環境への配慮に対するお客様からの要求が非常に高まっています。特に、CO2排出量の削減が強く求められています。建物を建設するには多くの建築資材を使用しますが、それぞれの資材がどれだけの環境負荷を持つのかを調査する必要があります。実際、建築技術部では各メーカーに問い合わせて調査を行っていましたが、資材の種類が膨大であり、効率的に進めるのは非常に困難でした。

そこで考えたのが、資材情報をWeb上に登録し、自動で検索やランキングができるシステムを作るというアイデアです。この企画を社内ベンチャー制度に応募したところ、見事に通過したため、今回のシステム開発が実現しました。

CMCOS(コムコス)の仕組み
CMCOS(コムコス)の仕組み

ーー すごいですね!なぜ、そもそも社内ベンチャー支援制度に応募しようと思われたのですか?
加藤氏:社内ベンチャー支援制度における事業創出のプロセスにはいくつかの種類があります。ゼロからアイデアを出してスタートするものもあれば、事前研修を受けた上で企画を提案するものもあります。

重田氏:東急建設では、社内新規事業の創出を目的に様々な企画を運営しており、その中のひとつに「InFiNiTO Club(インフィニートクラブ)」という、デジタル技術を学びながら新規事業を創出する研修プログラムがあります。

加藤氏:今回、応募する前に私が取り組んだのは、プログラミングに関する事業研修でした。この研修は、Webプロダクトの制作を通じて事業を立ち上げることを目的としており、私もこの研修に参加して、JavaやPHPなどを学びました。最終的な課題としてシステムを開発することになり、その際に自分のアイデアを反映させたものを完成させました。

東急建設社内新規事業創造プログラム InFiNiTO Club(インフィニートクラブ)
東急建設社内新規事業創造プログラム InFiNiTO Club(インフィニートクラブ)

ーー会社内で新規事業を推進する流れがあるのは素晴らしいですね!
加藤氏:企画が採択され、予算がついたことで活動が可能になりましたが、予算を自分で確保するのは難しかったと思います。

現在、社内体制が整い、会社全体で新しい取り組みを立ち上げる動きが出てきています。これは数年前には見られなかった変化です。当時は新規事業に取り組む事業部がなく、そうした試みも行われていませんでした。こうした体制が整ったのは、会社の方針が変わった証だと感じており、非常に感謝しています。

重田氏:毎年、社内で新規事業を創出するための社内ピッチコンテストを「MOON SHOT CONTEST(ムーンショットコンテスト)」の名称で開催しています。現在、検討している新規事業のアイデアは十数件あり、その中でWebプロダクトに関するものもあり、そのうちの1つがCMCOS(コムコス)です。CMCOSは加藤の熱意のおかげで検討活動のスピードが早く、スムーズに進行していると感じています。


CMCOS(コムコス)の今後の展望〜CO2対策に特化した新しい建材検索システムの挑戦〜

ーー CMCOS(コムコス)に対する社内の反応はいかがですか?
加藤氏:デザインが非常に高く評価されています!また、「こういう仕組みが欲しかった」という声もよく聞きます。同じ問題意識を持っている人たちにとっては、とても有用なサービスだと思います。

ーー CMCOS(コムコス)の将来的な展望について教えてください。
加藤氏:現状では、CO2削減に対する問題意識を持っている人はまだ少ないですね。私の感覚では、全体の1割ほどしかいないように感じます。しかし、今後CO2の規制が厳しくなれば、そうした意識を持つ人は増えていくでしょう。そのため、まずは基本となる基盤を構築することに取り組んでいます。「CMCOS(コムコス)」は問題意識を持っている人には共感を得られると思いますが、そうでない人には、同じ業界内でも分かりづらいかもしれません。

たとえば、既存の建材検索システムの多くは、金銭面に特化しているため、誰でも簡単に使えるものが多いです。しかし、「CMCOS(コムコス)」はCO2削減に特化しているため、ターゲットが限られています。ただ、今後20年、30年、50年と時が経てば、この需要は確実に増えていくと考えています。

まずはこの1年、CMCOS(コムコス)に注力し、広く展開していきたいと考えています。

ーー 今後、非常に社会的なインパクトのあるサービスになりそうですね!


ハイストーリーとの協業におけるプロジェクトの進め方

ーー 今回、ハイストーリーにご依頼いただいたきっかけは何でしたか?
加藤氏:最初はコンサルティング会社と一緒に、「こんなものを作りたい」という要件を検討していました。その過程で、システム開発を外部に委託することが決まりました。

重田氏:新規事業でのシステム開発は初めてのことだったので、どのようなパートナーと一緒にプロジェクトを進めていけばいいのか、全く分からない状態でした。そんな中で、事業コンサルティングの方からハイストーリーさんをご紹介いただきました。特に、ハイストーリーさんは新規事業の経験が豊富で、私たちと同じ方向性を共有しながら開発を進められると感じました。

加藤氏:第一印象もとても良かったです。こちらの質問に対して非常に的確に答えてくださり、難しい専門用語を使わずに話していただけたので助かりました。途中で他の会社とも相見積りを取るという話も出ましたが、コスト的にも予算内になるよう調整していただき、最終的に本決定となりました。

重田氏:それに、加藤さんとハイストーリーさんの相性が良かったのではないかと思います。

ーー 企画段階からワークショップなどをご一緒させていただいたと伺っています。その際に印象に残っていることがあれば、教えていただけますか?
加藤氏:2回ほどブレスト(ブレインストーミング)を一緒に行い、アイデアを出し合って、それを整理する作業を行いました。正直、システム開発であのようなことをするのは初めてだったので、「こんなこともやるんだ」と驚きました。しかし、初期のアイデア出しの段階から一緒に取り組んでいただいたことで、その後も違和感なく進めることができました。

実際のワークショップ風景
実際のワークショップ風景

加藤氏:最初に対面でワークショップができたのは、とても良かったと思います。ワークショップの内容も非常に充実しており、一体感が生まれて話しやすくなったという印象があります。また、私たちがあまり気づかない部分までしっかりと整理して、裏で根拠となる資料を丁寧に揃えてくださっていると感じました。

ーー開発に携わったハイストーリーの松山も、今回のワークショップが相互理解と作業効率の向上につながったと話しています。
松山:私どもとしても、最初から対面でご一緒できたことで、その後のデザインのぶれが少なくなりました。システムで何を実現したいかをしっかり理解できたため、それが設計にも反映されています。現在、追加でいただいているご要望についても、すぐに対応できる状況です。

重田氏:担当者が変わらず、ずっとサポートしていただいたこともありがたく、印象に残っています。

ーー全体を通じて、特に印象的だったことはありますか?
加藤氏:やはり、デザインが素晴らしかったです。最初に見たデザインが、私の思い描いていたイメージに非常に近く、ぴったりと合っていました。数あるデザインの中でも、私のイメージをしっかり反映してくれた仕上がりになっていたと感じています。

実際に使ってみても、動作は問題なくスムーズです。細かい点についても丁寧に説明していただいています。

無理なお願いをしている中でも、「こんなことできないかな?」という要望に対して、非常に柔軟に対応していただいていると感じます。私自身、プログラム研修に参加した経験があるので、「こういうこと言うと大変だろうな」と思いながらも、対応してもらっています。

重田氏:プロジェクトの進行に関しては、ハイストーリーさんにリードしてもらいながら進めました。WBS(ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャー)を作成してもらったことも非常にありがたかったです。そのおかげで、やるべきことが明確になり、「ここを来週までにお願いします」といった形で、忙しい中でも優先順位をつけて進めることができました。やるべきことの整理ができて助かりました。

ーー他の事業などでご一緒された開発会社と比べて、大きく違っていると感じた点はありますか?
加藤氏:そうですね、以前に通常業務で「こういうシステムを作ってほしい」と依頼したことがありました。その際の開発会社では、アイデア出しを一緒に行うという感じではなく、「仕様をください」というスタンスでした。いわゆる下請け業者のような形で進めていました。

一方で、ハイストーリーさんの場合は、相談しながら進めるスタイルで、「これ、どう思いますか?」といったやり取りができました。そうすると、「こうした方がいいのではないでしょうか」というフィードバックが返ってくるんです。その点が、今回のプロジェクトに非常にマッチしていたと思います。

悪い点を指摘してもらえるおかげで、「こちらはこうした方がいいのではないか」と、私たちからも提案できるようになりました。「そのやり方だとうまくいかないですよ」といった具体的な指摘をいただけるのは、本当にありがたかったです。

ーー見積もりや予算感についてはいかがでしたか?
重田氏:ハイストーリーさんには、いくつかの予算パターンを提示していただきました。並行して、社内のシステム部門とも金額の擦り合わせを行いましたが、提示された金額は妥当だったと考えています。非常に明確な金額設定の中で、手厚いサポートをいただけたのではないかと思います。

新規事業の柔軟サポートでスモールスタートを目指す人に

ーー 私どものサービスはどのような方にオススメできそうでしょうか?
加藤氏:今回、段階的に発展途上であり、人員のアサインも十分にはできていない状況でしたが、限られたリソースの中でスモールスタートを切ることができたのは非常にありがたかったです。

会社として「こうやるべき」と決められたシステム開発ではなく、課題解決を目的とした新規事業をスタートしたい方、一緒に考えて進めてもらいたい方にオススメです。

独自のアイデアを育てていくようなプロジェクトには特に向いているのではないでしょうか。新規事業を一緒にスタートできる感覚がとても良かったです。新規事業や新しいシステム開発を始めたい企業には、非常にマッチするサービスだと思います。

重田氏:今回、多くの資料を作成していただきましたが、上層部に承認を得るための内容を分かりやすい形にまとめてもらったおかげで、スムーズに承認を得ることができました。

特に、セキュリティ対策などの専門的な内容についても、ハイストーリーさんと話し合うことで上層部を納得させることができました。理解しにくい部分をディスカッションで解決できたのは大変助かりました。上層部に承認を取る場合や、社内のシステムに詳しくない人に説明する必要がある場合など、こうした資料は非常に役立つと思います。

ーー 今後、私どもに期待することがあれば教えてください。
加藤氏:私たちはシステムを作るだけでなく、事業の確度を上げるための活動も行っています。そのため、事業の成長においても伴走していただけるとありがたいです。事業の成長を促進しつつ、システム開発と改善を両立させる支援をお願いしたいと考えています。一気通貫でこれを実現できるようになると、より幅広い協力が可能になると感じています。

重田氏:昨今、生成AIを活用したさまざまなアイデアが発案されています。そのようなシステム構築に関してアドバイスをいただけたり、費用の見積もりを示してもらえると助かります。例えば、いくつかのメニューがあって、「この場合はこれくらいの費用がかかる」「この内容だと難易度が高い」といった情報が得られると良いと思います。

ーー 最後に、全体の感想をお願いします。
加藤氏:まずは形にしていただき、ありがとうございます。今回のプロジェクトが成功したかはまだ分かりませんが、現時点では順調に進んでいると感じています。特に、ハイストーリーさんにお願いしたことが大きな要因だと思います。このプロジェクトをぜひ成功させたいので、今後ともよろしくお願いいたします。

重田氏:我々としても、新規事業の成功例がまだないため、まずはCMCOS(コムコス)の事業化を実現したいと考えています。事業化後も「ハイストーリーさんのシステム構成だからこそうまくいった」と確信できるように進めたいです。この成功モデルを基に、新たな案件でもまたご一緒できればと思っています。


【取材協力】
東急建設株式会社
https://www.tokyu-cnst.co.jp/

建材CO2検索システム『CMCOS(コムコス)』
https://cmcos-co2.com/