広告流通のしくみを変え、中小企業のマーケティング強化を目指すスタートアップ企業、株式会社En-Broker(エンブローカー)様の「MediAge(メディエイジ)」の開発支援事例をご紹介します。
MediAgeは、中小企業向けに、約360の国内メディアの中から提案を受け、比較・発注・効果測定まで一貫して行えるメディアマッチングプラットフォームです。広告メディア情報の分散や価格不透明性を解消し、企業が適切な広告手段を選ぶことができるように、広告市場の拡大と日本経済の活性化を目指しています。
サービス開発にあたり、株式会社ハイストーリーをご利用いただいた経緯や開発を通じて感じたことなどについて、株式会社En-Broker代表取締役である髙久渚氏にお話を伺いました。

株式会社En-Brokerの事業展開
ーー 株式会社En-Broker様の事業内容について教えてください。
髙久氏:現在、株式会社En-Brokerでは主に2つの事業を行っています。1つ目はマーケティングコンサルティングです。マーケティングに関して不明点のある新規顧客向けに、「どのように仕組みを作ればよいか」や「テレビのような認知系メディアに出したいが、どのメディアが最適か分からない」といった相談に対応しています。具体的には、事業戦略からマーケティング戦略を策定し、それを施策に落とし込み、メディアプランニングや広告運用を行うなど、施策の実行とPDCAの実施まで一貫して支援しています。
2つ目は、今回ハイストーリーさんにご協力いただいたMediAgeというウェブサービスの運営です。これは、マーケティング課題に対して最適なメディアを選定し、広告施策を効率的にマッチングするためのプラットフォームです。
私は主に全体の事業計画と、これまでに既存の関係がない新規クライアントを引き込む営業を担当しています。既存の顧客からの紹介(リファラル)で仕事をいただけるのはありがたいですが、どこかで限界が来るため、新規営業も強化していかなければならないと考えています。

MediAge誕生の背景〜広告業界の課題を乗り越える新たなプラットフォーム〜
ーー 今お話に出たMediAgeを立ち上げたきっかけについて教えていただけますか?
髙久氏:MediAgeは、広告業界で良い広告施策を発注したい企業と、その施策を持つメディアをマッチングするプラットフォームです。

髙久氏:起業前、私は業務管理ソフトを提供する企業で営業をしながら、広告代理店の仕事を手伝っていました。その際、外部から見ると、広告代理店の業務はどの部署でどのように進められているのかが明確にイメージしにくいと感じました。さらに、広告代理店の仕組みは日本の1%にも満たない大企業にしか適用されておらず、中小企業にはほとんど行き届いていないことにも気づきました。
本来、広告代理店はメディアとのネットワークを活用し、広告施策を行いたい企業をサポートする役割を担うべきですが、実際にはまったく別の新しい分野に進出するなど、人件費や予算が他の事業に向けられていることが分かりました。
この経験から、大企業だけではなく、より幅広い規模の企業に対してサービスとして提供することが、ホワイトスペース(未開拓の市場)として大きな可能性があると感じ、現在のサービスにつながっています。
ーーもともとMediAgeを立ち上げたいと思って起業されたのでしょうか?
髙久氏:そうですね。起業前から、どんなものを作りたいかというイメージや機能はありましたが、実際にどうするかという部分で数ヶ月間モヤモヤしていました。ただ、MediAgeを前提としたスタートアップの形態でやろうという考えは最初からありました。
ーースタートアップと聞くと、資金集めが大変だとよく聞くのですがいかがでしたか?
髙久氏:ある程度のキャリアを積んでから起業したため、これまでのネットワークを活かしてエンジェル投資家などの支援をすぐに集めることができました。また、現在はスタートアップ向けのアクセラレーションプログラムも多く、出資を前提としたものもあるので、採択されたことが大きな助けとなりました。
ハイストーリーとの出会い〜信頼できるパートナー選定の理由〜
ーー 今回、ハイストーリーが開発をお手伝いさせていただいた経緯を教えてください。
髙久氏:最初にプロダクトを作る際、MVP(Minimum Viable Product、最低限の機能だけを搭載した製品)を効率的に作ろうと考えました。コストを抑えて開発できる方法を探していたところ、「Bubble」というノーコードで開発できるプラットフォームを見つけました。そこで知り合いのエンジニアに依頼したのですが、結果的には思ったようなものができませんでした。
その後、もう少し専門家を探そうと思い、Googleで検索してみたところ、スタートアップ初期のプロジェクト立ち上げや新規事業に精通したエキスパートとして紹介されていました。10数年ぶりに再会する形で、Facebookで連絡を取ったのが始まりでした。
ーー ハイストーリーを知っていただいた後、依頼しようと思われた決め手はありましたか?
髙久氏:大きく分けて2つあります。1つ目は、担当者の松山さんの圧倒的な人柄です。ビジネスサイドのコンセプトややりたいことを伝える際も、しっかりとコミュニケーションを取り、高い理解力を発揮してくれました。また、私が理解できないシステム面についても、広い視点で分かりやすく説明してくれたのが印象的でした。そして、穏やかで包容力のある人柄も大きなポイントでした。
2つ目は、豊富な経験です。大規模なエンジニア組織のマネジメント経験を持ちながら、スタートアップでの新しいサービスの立ち上げやグロース支援、さらには他社でのCTO経験もお持ちです。大企業での経験に加え、スタートアップでのアジャイルな対応力も備えており、その安定感が非常に大きな魅力でした。

MediAge開発の振り返り〜要件定義とデザインの重要性〜
ーー ありがとうございます。では、もう少しMediAgeの開発についてお話をお聞かせください。開発後のアンケートで「要件定義とデザインが良かった」という声をいただいていました。その点について、印象に残っていることがあれば教えてください。
髙久氏:そうですね、要件定義については、スプレッドシートなどを使って技術的な前提や画面項目、各項目の詳細をしっかりとまとめていただき、それを基に定例会議で話し合いを進めていました。また、「これを追加したい」「これを変更したい」といったこちらの要望もやり取りしましたが、その前提となるドキュメントが非常にきれいに体系的に整理されていたため、議論が非常にスムーズに進みました。リリース後にプロジェクトに参加していない方とも円滑に会話ができ、今後のプロジェクトの資産としても非常に役立つものを提供していただけたと思っています。
デザインについては、B2B向けのサービスということもあり、「パッと見て分かりやすく、信頼感がある」という要素をしっかりと反映していただき、非常に満足しています。
ーー 特に気に入っているところはありますか?
髙久氏:私はコーポレートカラーとして赤がとても好きなのですが、赤は強い色なので、それをベースにすると難しいかなと思っていました。しかし、うまく調整してデザインに落とし込んでくれた点が気に入っています。配色のセンスが非常に良かったです。
それから、今回はReactの基本テンプレートを使ったデザインで、確かマテリアルデザインを取り入れていただいたと思うのですが、正直、デザインに大きな予算をかけることができなかったので、そのような提案はありがたかったです。結果的に、トーン&マナーがしっかり整ったサービスとして見てもらえたのは、その提案と実装のおかげだと思っています。

リリース後の反響〜広がる利用者層と期待される地域貢献〜
ーーリリースされて、最初の反響はどのような感じでしたか?
髙久氏:コンセプトについては、より多くの企業に広告マーケティングの情報や優良なメディアをつなげていくという発想が、日本経済の活性化につながると、多くの方から評価をいただきました。
また、システムについては、まだPMF(プロダクト・マーケット・フィット)を目指す過程で、いくつかのピボットを行いながら進めているフェーズですが、システム設計やユーザーインターフェースについて「とてもよくできている」との評価をいただいています。
ーー 現時点でのMediAgeの利用状況や成果について教えていただけますか?
髙久氏:現在、システムへの登録はまだ追いついていませんが、約360のメディアと提携できています。テレビや雑誌といった従来のメディアから、新しいウェブメディア、リテールメディア、ビジネス映像メディアなど、幅広い分野で提携しています。
利用者については、最初は大手広告代理店が業務効率化のために使用していただいたのが始まりです。現在では、不動産業界のように広告代理店ではないものの、マーケティングコンサルから入り、広告運用まで自社で行いたいと考えるコンサルティング会社にもご利用いただいています。
また、最近では、私が横浜出身で実家が横浜で事業を行っている関係から、横浜市のアクセラレーションプログラムに採択されました。今後は、特定の地域行政とも連携し、地域で企業活動に取り組んでいる会社に向けて、よりフォーカスしたマーケティング支援やメディアサポートができるプロダクトにしていきたいと考えています。

ビジネスを理解したシステム提案ができる貴重なパートナー
ーー今回が初めての開発依頼だったとのことですが、作業の進め方やご自身にとって良いと感じた点についてお聞かせください。
髙久氏:これまでコンサルティング業務には慣れていましたが、自社でシステムサービスを企画し、開発・リリースするプロセスは初めてでしたので、非常に良い経験でした。私のように、比較的堅実なキャリアから起業し、それでもスタートアップのスピード感やコストのバランスに適応しながら進めていく必要がある方には、非常にフィットするのではないかと感じています。
ーー他社との違いを感じられた点があれば教えて下さい。
髙久氏:スプリントの進行や業務フローごとの資料など、全体のドキュメントを丁寧に体系的に用意していただけたことがとても良かったです。スタートアップ専門の技術者の中には、意外と詳細なドキュメントを整備できない方も多く、スピードは速いけれど、後からトラブルが起きてしまうこともよく聞きます。
また、スケールする際のゴールが明確で、それをスタートアップ向けに適切に落とし込んでいただいたことが素晴らしいと思いました。実際のサービス開発だけでなく、そのサービスを含めたビジネスの進め方についても一緒に考えていただきました。我々の「こうしたい」という漠然としたアイデアを形にする過程で、システムへの適用性についてもご提案いただきながら進めることができました。

ーー他に印象に残っていることがあれば教えてください。
髙久氏:システム要件を十分に考慮していない部分があり、頻繁に変更してしまうこともありました。その中で、既存の要件をそのままシステム要件に落とし込むのではなく、「この部分は業務要件を少し変えた方が、システムに適応しやすい」といったご提案をしていただけました。
また、ハイストーリーさんは、広告の発注側と受注側の両方のステークホルダーとしての豊富な経験があるので、その観点を踏まえた提案をいただけたことも大きかったです。今のSI(システムインテグレーター)業界は、さまざまな年齢層の方が活躍していますが、その中でも、ただの受託開発ではなく、本当に新しいサービスを一緒に開発していくパートナーとして伴走していただけたことが、圧倒的な強みだと感じました。
ーー私どものサービスはどのような方にオススメできそうでしょうか?
髙久氏:そうですね、まずは30代から40代で、大企業でバリバリ働いていた経験のある方々、私のような人たちです。似たような起業家と話をしていると「技術的に自分で作れないものを非常に高い技術力で対応してくれるSI企業やCTOはいるものの、ビジネス面を理解した上で提案してくれる人はまだ少ない」とよく聞きます。自分でサービスを開発し成長させた経験がない方には、起業を考えたときにハイストーリーのサービスが特に有益だと思います。
また、若い世代の方々の中には、さまざまな分野でプラットフォームを活用して情報の非対称性を解決しようとしている方が増えています。私も同様のニーズを感じており、BtoBプラットフォームを考えている方や、BtoBに特化した業界向けのサービス、あるいは何かと何かをつなぐプラットフォームを企画している方には特にオススメです。
リリース後のメンテナンスと拡張性を考慮した視点と今後への期待
ーー スケジュール感や費用感についてはいかがでしたか?
髙久氏:最初はMVP(Minimum Viable Product)として、基本的な機能を持つマッチングプラットフォームを作り、広告主の課題やメディアの情報を登録して、双方がマッチングできるように進めました。このプロジェクトは二段階のスケジュールで進行しましたが、柔軟性があって非常に良かったと感じています。
開発期間は1年以上かかりましたが、期間が長くなると初期の計画からずれてしまうことや、コミュニケーションが難しくなることもあります。しかし、その点についても柔軟に対応していただけたので、プロジェクトを無事に完了できたと思います。
費用については、サービス公開時から不具合による技術サポートなしで、保守管理費0円、サーバー費0円で運用し続けています。運用面でとても助かっています。

ーー 今後、私どもに期待することがあれば教えてください。
今回、一つのプロダクト開発において技術的なパートナーとして、一緒にリリースを迎えられたことに非常に感謝しています。ただ、技術力だけでなく、ビジネスとシステムをつなぐ視点が重要であり、リリースをゴールとせず、その後のメンテナンス性や拡張性まで考慮したインフラ基盤を構築していただけたことに、心から感謝しています。
今後も多くのSI企業の底上げ役として、業界全体に変革を起こす力を持つのではないかと期待しています。ハイストーリーのサービスがあると、システム開発において一歩を踏み出せず、つらい経験をした結果「もう住宅業界でいいや」や「コンサルに戻ろう」と考える不幸なスタートアップが減るのではないかと思います。
また、スタートアップだけでなく、中小企業や中堅企業にもこうしたニーズが存在すると感じています。新規事業を立ち上げたいが人手が足りないといった課題を解決するための橋渡し的な役割を果たしていただければ、さらに幸せな企業が増えるのではないかと思います。
【取材協力】
株式会社En-Broker
https://en-broker.co.jp/
「MediAge(メディエイジ)」プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000110592.html