小学校向けの情報共有ツールを提供する企業において、新規サービス開発支援の事例をご紹介します。このサービスは学校業務アプリと保護者用アプリを同期し、生徒の出欠や学校からのお知らせなどをアプリ上で共有できるコミュニケーションツールです。
開発の背景
新規サービスの開発で注意すべき点として、システム開発の遅れによりサービスの提供開始が遅延し収益機会を失ってしまうことや、開発期間が延びることで当初の予算を上回ってしまうことなどが考えられます。
そのような点を回避するため、どの機能にどれだけの工数がかかるかを見える化し、綿密なコミュニケーションを取ることで、サービス開発における遅延や予算超過のリスクを軽減しスムーズなプロジェクト進行を行いました。

予算内で開発を進めるために必要なこと
今回のツールでは、学校用と保護者用のアプリを連携し、「お知らせ」「アンケート」「カレンダー」「出欠連絡」「成績共有」「身体成長記録」などの機能を実装する必要があります。画面は約200枚、データテーブルは300以上に及ぶ大規模な開発案件で、開発期間は1年間と設定されていました。

画面デザインと並行して開発を進め、デザイン通りに完了した段階で、全体のスケジュールとタスクを見直し、工数を整理しました。これまでの作業ペースを基に、1か月程度の工数を算出し、その結果をもとに全体の開発を見直しました。 その結果、この規模の開発には2年以上の期間が必要であることが判明したため、全体の機能を精査し、一部の機能を削ることを提案しました。
機能を削減する際に、一部の機能を単純に取捨選択するのではなく、全体の企画を見直し、経営者の視点からサービス全体を俯瞰して、現在どの機能が本当に必要か判断します。
例えば、当初は保育園向けのツールを想定していましたが、保育園の日誌は園ごとに形式が異なり、それらを共通の形式で表示するには多大な工数がかかるため、そもそものターゲットを変更し、保育園向けから小学校向けのツールへ方向転換(ピボット)することを提案しました。この判断により工数を適切に抑え、期日と予算内でサービスを無事に公開することができました。
ハイストーリーならではの工夫
このように全体スケジュールを見直し、要件を再定義する際には、開発工数の「見える化」が重要です。
優先度を決めるのは企画者ですが、各機能に必要な開発日数は開発者にしかわかりません。そのため、企画者が考えやすいように、どの機能にどの画面が必要で、どれだけの工数がかかるかが一覧で確認できる画面ごとの工数表を作成しました。

工数表からは全体のタスクが見えるため、例えば「残り200の工数で作らなければいけないのに、350もある」といった状況を把握でき、どこを削減すべきか判断しやすくなります。また、どの機能にどれだけの工数がかかるのかといった開発規模を一目で把握できるため、優先度を設定する際の有効な手立てとなります。
さらに、優先度に基づいて開発期間をA〜Hの開発フェーズに分割し、それぞれのフェーズでどの機能を実装するかが一覧できるようにしました。このように、進行状況を「見える化」することで効率化を図りました。

CTOの目線
これまで、システム開発のスケジュール遅延については、開発側に責任があるというイメージがありました。開発会社によっては、スケジュールの遅延が予算の増加につながるため、多少歓迎するケースや、開発側が気合で納期に合わせようとする、ブラックな開発現場の声も聞かれます。
今回私たちは、工数表を企画者とのコミュニケーションツールとして活用し、開発全体の中で必要な機能の優先度を決めてもらうための資料として位置づけました。優先度を決める際に重要なのは、全体の企画を見直し、経営者の視点でサービス全体を俯瞰しながら、予算と納期を考慮した上で仕様を調整していていくことです。

サービス開発にはエンジニアの目線から今後何が必要か一緒に考える人が必要です。CTO EYEsでは、開発前の要件定義や予算に関するご相談も承っております。
提案資料作成の効率化や品質向上、組織全体の営業力強化など、生成AI導入に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。